乾杯

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息子の採用内定を知った昨日の夕飯時のことです。

お膳を前に、息子がコップに麦茶を注ごうとしていました。

夫は、その手を遮り、そのコップに ほんの少しビールを注ぎ、「飲め!」と顎で示しました。

息子の左手には、今、数センチ注がれたビール・・・

「おまえ、乾杯は右手ぞ!」

と注意を受けながら、右手に持ち換える息子です。

コップの合わさる音がリビングに響きました。

私は、父親と息子の初めての乾杯を見ました。

私の目頭は濡れていました。

ちょっとぎこちない乾杯でしたが、高校生の息子が父親に認められた瞬間でした。

思い出します。

小学校高学年まで添い寝をしなければ寝付けなかった息子の左手は、ふわ~っと いつも優しく私の髪に触れていました。

「おまえ、それでも男か?アマチャンじゃのう。」

と、その度父親の渇が飛んできました。

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最近、どうも涙腺が緩くて・・・。どなたにもこの顔は見せられないわ。

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今夜は家族が揃ったので『どんどこ』で祝宴をしました。

今回は泣かなかったよ。

甘露。甘露。

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チューリップオレンジ   チューリップ紫   チューリップピンク

あったかい言葉

 

職場の窓から四国山脈が遠くに見える。

先生から息子の採用内定の知らせが入った。

飛び上がりたいほど嬉しかった。

窓に目が行った。山の配色は真夏の頃とは明らかに違っていた。

秋の気配が胸に染みる。

一廻り年上の奥様が目の前に座っている。

奥様は、息子の就職試験の日からこれまでの期間、事務所への携帯の持ち込みを許して下さっていた。

一次募集の不採用から今回の結果まで、携帯を手にする私の対応振りを見て気に掛けてくださっていたようだ。

「おめでとう。よくここまで育てたね。大変だったでしょう。」

と、奥様が低い声で言った。

私は目頭が熱くなった。胸も熱くなった。

ねぎらいの言葉を頂くのは初めてだった。

これまで子育てが辛いとは思わなかった。大変だとは思いたくなかった?

『親として当たり前のことを当たり前に!』

と、子どもと向き合ってきた。

奥様の言葉があったかかった。

私をすっぽり包んでくれた。